10-7.遺言のQ&A

10.遺言

Q1)遺言の内容を変更できますか?

A1)遺言は、遺言者の最終意思を尊重する趣旨から、遺言者は、いつでもその遺言を撤回したり変更したりすることができます。公正証書遺言を自筆証書遺言で変更・取消しすることもできます。

 

Q2)遺言を書き損じた時は?

A2)訂正することができますが、加除訂正の仕方は非常に厳格で複雑です。訂正の仕方を誤ると訂正の効力が生じません。訂正箇所が遺言の核心と言える部分のときは、新たに遺言書を作り直すことをお勧めします。

 

Q3)公正証書遺言を作成するために、準備するものは何でしょうか?

A3)基本的には以下のものを準備します。

① 本人の実印と印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
  又は、運転免許証等の顔写真付きの身分証明書
② 戸籍謄本(遺言者と相続人の続柄がわかるもの)
③ 財産をもらう人の住民票(相続人以外の人に遺贈する場合)
④ 土地・建物の登記事項証明書・固定資産評価証明書
⑤ 証人の住民票等(氏名・生年月日のわかるもの)

 

Q4)遺言は誰でも作成できるのでしょうか?

A4)法律では、満15歳以上の者が遺言をすることができると規定しています。よって、15歳以上であれば未成年者でも遺言をすることができ、成年被後見人でも遺言をすることができます。

ただし、成年被後見人が遺言をするには医師2名以上が立会い、被後見人が遺言を作るときに事理弁識能力が回復していた旨を遺言書に付記し、署名押印する必要があります。

なお、正常な精神状態で遺言した者が、その後心神喪失状態になって死亡しても、遺言は有効です。

 

Q5)遺言書が見つかったらどのような手続きが必要でしょうか?

A5)公正証書による遺言でない場合、遅滞なく家庭裁判所に対し、検認の申立てをしなければなりません。

これは相続人に対して遺言の存在と内容を知らせると同時に、遺言書の偽造・変造を防ぎ保存を確実にするためです。したがって、この検認手続きを経ても遺言が有効であると判断されるものではありません。

 

Q6)数通の遺言書がでてきたらどの遺言書に沿って遺言を執行すればいいのでしょうか?

A6)遺言者の最終意思を尊重しますので、内容が抵触する部分については日付の新しい遺言が優先され、日付の古い遺言は撤回されたものとされます。

 

Q7)パソコンで自筆証書遺言をつくれますか?

A7)自筆証書遺言では遺言書の全文、日付、氏名を遺言者が自ら手書きで書くことになっており、パソコンで書いた遺言は遺言として有効な遺言とはなりません。

★平成30年3月に通常国会に提出された民法改正案(相続関係)

自筆証書遺言にて、財産目録部分については自書しなくてもよいとされるようです。

 

Q8)遺言書の保管はどうしたらいいでしょうか?

A8)遺言者自らが保管する場合、遺言者名義の貸金庫に保管するのは注意が必要です。貸金庫は遺言者が亡くなった後、開扉するために相続人全員の立会いが求められるなど、手続きが大変です。

当該相続と利害関係を持たない、公平で信頼できる第三者に事情を話して遺言書の保管を頼み、死亡時に相続人等に報告してもらうのがよいでしょう。遺言作成を手伝ってもらった専門家や遺言執行者にお願いすることも、検討に値します。

 

Q9)法定相続分と異なった内容の遺言がある場合、遺言と法定相続分のどちらが優先されるでしょうか?

A9)被相続人の意思を尊重して遺言が優先されます。もっとも、遺留分という制度によって一定の制約はあります。

 

Q10)亡くなった父が公正証書遺言を残したらしいのですが見つかりません。何か探す方法はないでしょうか?

A10)亡くなった方の戸籍謄本、相続人であることの証明書、本人証明となる運転免許証等を持参して、公証役場(どこでもよい)に行って調査を依頼します。

 

Q11)遺言書が偽造された場合はどのようなことが考えられるでしょうか?

A11)仮に偽造が疑われていても家庭裁判所の検認手続きをします。

次に、家庭裁判所に遺言無効確認の調停申立をします。もし当事者間で、この調停の合意が成立しない時又は家庭裁判所が審判をしない時は、遺言無効確認の訴えを地方裁判所に提起します。

 

Q12)遺言に遺言執行者の指定がない場合でも、遺言執行者は定められますか?

A12)遺言執行者が必要な場合には相続人・利害関係人等は家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任を申立てることができます。

 

Q13)夫婦が一緒に1通の遺言書で遺言しても、有効な遺言書になるでしょうか?

A13)自由な遺言が出来ない、又撤回の自由を妨げる等の理由で禁止されています(民法975条)。

 

Q15)相続人に財産を承継させるときに使う言葉で、「遺贈する」と「相続させる」との違いはなんですか?

A15)「相続させる」とできるのは、推定相続人に対してのみです。この場合、被相続人(遺言者)が亡くなると、直ちに対象財産はその相続人が取得することになります。そのため、不動産の相続登記は相続人が単独で申請することができます。

一方、「遺贈する」とできるのは推定相続人に限りません。また、不動産登記は、原則どおり共同申請となるため、相続人全員が、受遺者と協力して申請しなければなりません。この不都合を解消するために、遺言執行者を選任することをお勧めします。遺言執行者がいる場合、受遺者と執行者とで登記申請ができ、相続人全員の協力を得る必要がありません。

 

Q16)遺言書に遺言執行者が○○信託銀行と定められているのですが、必ず執行してもらわなければいけないのですか?

A16)必ずしも執行してもらわなくて大丈夫です。信託銀行の執行費用は最低100万円くらいかかる報酬規程になっております。また、この中に司法書士や税理士の専門家報酬が含まれているわけではなく、相続人に過剰な負担となっているのが事実です。

信託銀行主導で遺言を作成する際に、いつの間にか遺言執行者として信託銀行が指定されてしまうことが多く、一方でその執行費用につき関係者が把握していることが少なく、問題視されています。

金融機関が用意している「遺言信託」なる商品の多くはこのような仕組みとなっており、要注意です。「遺言執行」と言うけれどいったい何をしてくれるのか、その執行費用は本当に必要なものなのか、きちんと確認を取られた方がよいです。仮に当事務所で代行すれば50万円程度で収まってしまう場合もざらです。そのように、その執行内容と執行費用の関係に疑問を持ったら、遺言執行者の職を下りてもらうとよいです。具体的にどうしたらよいのかは、当事務所にご相談ください。

 

Q17)遺言書どおりに財産の分配を行わなければなりませんか?

A17)遺言書があっても、遺言書の内容によっては、相続人全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割協議は可能です。ただし、遺言による遺贈があれば、受遺者の同意も必要となりますし、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者の同意を得る必要があります。

なお、遺言書の内容で、遺言と異なる遺産分割協議ができないケースとして裁判で論点となったケースは、特定の財産を特定の相続人に相続させるとする条項のある遺言書です。この場合、相続開始と同時に当該相続人に遺産が帰属するので、その後の遺産分割協議による他の者への帰属は、交換の実質を持ち、税務上の課題や、登記実務上の課題があるとする向きもあります。


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