7-3.相続人が未成年の場合

7.相続を翻弄する「人」の課題

相続人に未成年者がいる場合、未成年者は自身では遺産分割協議ができません。どのようにしたらよいでしょうか。

 

1.未成年者の特別代理人の選任

1)特別代理人を選任するケース

未成年者は、遺産分割協議のような法律行為は、自身ではすることができません。未成年者の法定代理人が代わって行います。法定代理人とは、通常の場合、親権者である親です。

では、次のような相続において、親は法定代理人として未成年者の代わりに遺産分割協議ができるでしょうか。

・被相続人 父37歳
・相続人 母35歳
・相続人 子10歳

このケースでは、母子が共同相続人であり、母子の間で遺産分割協議をしなければなりませんが、母の相続分が増えれば子の相続分は減る関係になります。

このような関係を「利益相反関係」といい、法律は子の権利を守るために、この相続に関して母が子の代理人となることを禁じています。

そこで、未成年者に対し特別代理人を付けて、この遺産分割協議のみ未成年者の代理をしてもらい、手続きを進める方法があります。

2)特別代理人の選任方法

ア)特別代理人の候補者

特別代理人は成年である必要がありますが、今回の相続において相続人でなければ、たとえば母の妹など、母に近しい人物でも構いません。ただし、選任権限は家庭裁判所の専権事項ですので、今回の相続において候補者が代理人としてふさわしくないと判断されれば、別の候補者(第三者たる専門職)が選任されることもあります。

候補者の例

① 祖父母
② 親の兄弟姉妹
③ 親交のある知人

イ)家庭裁判所への申立て

特別代理人は未成年者の住所地の家庭裁判所に選任を申し立てます。

申立てに必要な書類で一般的なものは下記のとおりです。

① 申立書
② 利害関係を示すための戸籍関係
③ 特別代理人候補者の住民票の写し又は戸籍の附票
④ 利益相反行為の内容がわかる書面;遺産分割協議書の案

3)特別代理人を選任した場合の課題~法定相続分の確保?

特別代理人が署名すべき遺産分割協議の内容について、実は課題があります。

ア)通説

原則として、未成年者の法定相続分を確保しなければならない、とされています。

先の例でいえば、遺産に預貯金がほぼなく、分割できるものは自宅のみであるとき、母が自宅を相続するのであれば、その半分に見合う現金を母が子に対し、自分の預金から代償金として支払う必要があります。もしくは、自宅を母と子の共有にする必要があります。

子の法定相続分を確保することなく、母がすべてを相続するという遺産分割協議案を作成して、特別代理人の選任申立てをした場合、家庭裁判所から指導が入る、と言われています。

イ)実務では

しかし、当事務所が支援したお客様の案件では、通説のような案を作成したことはほとんどありません。たとえば、配偶者が若くして亡くなり、子の扶養義務を負うべき残された親が、全財産を相続して一人で子を育てていく環境にある中で、通説のような遺産分割協議をするのは当事者の環境に合致しているとは言えないと思うのです。

親に遺産を集中させる遺産分割協議案を作成し、その作成の背景を上申することで、家庭裁判所より意見がついたとしても、最終的にはその内容で特別代理人の選任審判が出されています。

ウ)特別代理人の責任

法律的には、そのような遺産分割協議(子が一切を取得しないとする)を成立させた特別代理人の責任が追及される余地は残ります。人間関係、取引関係を勘案したとき、未成年者が何も相続しないとする遺産分割協議について、特別代理人が責任追及される可能性があるならば、そこへの配慮は必要でしょう。

 

2.特別代理人を選任しないケース

1)未成年者が成年に達するまで待ってから遺産分割協議をする

未成年者が18~19歳の場合、成年に達するまで待ってから遺産分割協議をするのも、実務上はよくとられる手段です。

遺産分割協議をして相続登記を今すぐしなければならない事情が特段なければ、一考に値します。特に、遺産分割協議において子が何も取得しないとする内容としたいのであれば、前述した特別代理人の責任問題を無くす意味でも、成年に達するのを待つことはいいことでしょう。

2)親が代理できるケース

たとえば、次のような相続のケースがあります。

被相続人  父の兄(伯父)
相続人   子  ※父はすでに死亡 法定代理人に母あり

伯父に子がいなく、父・伯父の両親(祖父母)も亡くなっており、第三順位の兄弟相続となっている事例です。伯父の兄弟である「父」が先に亡くなっているので、代襲相続で子(未成年)が相続人となった事案です。

このとき、母は伯父の相続における相続人ではないので、母が子の法定代理人として遺産分割協議に署名できます。

なお、このケースで、子が複数いるケースでは、母が代理できるのは、うち1名のみであり、他の子については、母以外の特別代理人を選任する必要があります。

 

3.特別代理人選任申立ての料金

未成年者の特別代理人選任申立て

未成年者の特別代理人選任申立て

5万円 +消費税

2名以上1名につき 1万円 +消費税

*料金に含まれているサービス

① 戸籍等の取得
② 申立書の作成
③ 遺産分割協議書案の作成
④ 家庭裁判所から意見がついた場合の対応


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