6-5.相続放棄のQ&A

6.相続放棄

Q1)亡くなった夫に借金があり、相続をしたくない場合はどうすればよいですか?

A1)相続放棄、又は限定承認という方法があります。相続放棄は、最初から相続人ではなかったとみなされますので、当然債務を弁済する義務から解放されます。

限定承認は、相続した財産の範囲でのみ債務を弁済し、仮に財産が残った場合にのみ、その財産を相続するという制度です。

共に、相続開始から3か月の間に家庭裁判所に申し立てなければなりません。限定承認を申し立てる場合には、相続人全員でする必要があります。

また、一度相続放棄や限定承認の申し立てをしてしまうと、原則として撤回はできませんので、事前に十分な調査をする必要があります。

 

Q2)被相続人の生存中に相続放棄をすることができますか?

A2)相続放棄は、被相続人の死亡後でなければ、手続をすることができません。相続人間で相続放棄を強いることを防ぐ趣旨です。

なお、予め、相続を放棄する内容の書面を残しても、法的には意味がありません。

 

Q3)被相続人が死亡してから3か月以上経過してしまったのですが、相続放棄はできますか?

A3)相続放棄は、「被相続人の死亡後、自分が相続人になったことを知った時から」3か月以内にしなければなりません。

しかし、自分が相続人であることを知っていても相続財産の状況を詳しく認識できなかったという「相当の理由」があれば、「被相続人の死亡後、自分が相続人になったことを知った時から」3か月を過ぎていても相続放棄できる場合があります。

裁判所に認めてもらうための申述書を作成することがポイントになりますので、3か月を超えてしまったという方も、当事務所にお気軽にご相談ください。

>>3ヶ月経過後の相続放棄 について詳しくはこちら

 

Q4)被相続人の不動産を売却してしまったのですが、相続放棄できますか?

A4)相続財産を相続人が処分してしまった場合、相続放棄ができなくなります。不動産は重要な相続財産ですので、相続放棄が認められなくなる可能性が高いでしょう。

しかし、後から予期しない高額な負債(借金)が判明した場合など、「相当の理由」があれば認められる可能性もあります。

>>単純承認と限定承認 もご参照ください

 

Q5)被相続人の預貯金を葬式代に使用してしまったのですが、相続放棄できますか?

A5)相当の範囲内での使用であれば相続放棄の障害にはなりません。不相応に豪華な葬儀を行なった場合等は「相続財産の処分行為」とみなされますので注意が必要です。

 

Q6)被相続人の使用していた日用品を処分してしまったのですが、相続放棄できますか?

A6)日用品などの一般的に資産価値がない相続財産に関しては、処分してしまっても相続放棄の障害にはなりません。

 

Q7)相続放棄した場合、被相続人の預貯金の引き出しを行うとどうなりますか?

A7)相続放棄をすると相続人ではありませんので、被相続人の預貯金を絶対に引き出したりしてはいけません。もし引き出してしまった場合には、単純承認とみなされる場合がありますので注意が必要です。

 

Q8)相続放棄した場合、被相続人の不動産はどうなりますか?

A8)相続放棄の結果として誰も相続する人がいなくなった場合、利害関係人等の請求により相続財産管理人が選任され、債権者に分配された後、特別縁故者がいない場合は最終的に国庫に帰属するか、5年あるいは10年経過により預金債権が時効となり消滅することになります。

 

Q9)相続放棄の手続き中に、金融機関から支払いの請求された場合はどうすればいいですか?また、相続放棄の手続き後に、相続放棄が完了したことを、金融機関に知らせる必要はありますか?

A9)相続放棄の手続き中なので、支払うつもりがないことを伝えましょう。

相続放棄の完了を金融機関に知らせる義務はありませんが、支払いの請求をされたくない場合は相続放棄の手続きが完了したことを伝えましょう。

 

Q10)相続放棄の手続き中に、他の相続人から遺産分割の書類に署名押印をするように言われた場合はどうすればいいですか?

A10)相続放棄の手続き中なので協力できないことを伝えましょう。遺産分割協議に参加することは「相続財産の処分行為」にあたりますので、応じてしまうと相続放棄が認められなくなる可能性がありますので、ご注意ください。

 

Q11)相続放棄が取り消される場合はありますか?

A11)相続放棄の手続きが完了した後で、相続財産を隠したり、使ってしまったりすると単純承認とみなされ、相続放棄の効力を失う可能性があります。

 

Q12)相続放棄を撤回することはできますか?

A12)相続放棄の手続きが完了した後で、相続放棄を撤回することはできません。しかし、騙されて相続放棄をした場合や、脅されて相続放棄をした場合等の一定の事由がある場合、相続放棄を取り消すことができます。

 

Q13)夫が多額の借金を抱えて亡くなりました。相続放棄をしたいと思っています。しかし受取人が妻である私になっている生命保険金はもらいたいと思っています。相続放棄をすると、生命保険金は受け取れなくなるのでしょうか。また、生命保険金を受け取ってしまうと、相続放棄ができなくなるのでしょうか。

A13)受取人が被相続人以外であるならば、生命保険金を受け取っても、相続放棄には影響がありません。相続放棄後に生命保険金を受け取ることもできます。

これは、受取人が、亡くなった方以外の者に指定されている場合、指定された者の固有の権利として生命保険金を受け取ることができるからです。したがって、相続放棄があっても生命保険金は受け取れます。

また、生命保険金は相続財産に含まれませんから、生命保険金を受領しても相続財産を処分したことにはならず、相続放棄が可能です。

一方、生命保険金の受取人が亡くなった方となっている場合、生命保険金は相続財産となるという考えから、これを受け取ると相続放棄ができなくなる可能性もありますので、ご注意ください。

なお、故人が生前に計画的に生命保険に入り、相続人は多額の生命保険金を手にしながら、相続放棄をして借金からは免れた事案で、訴訟にて問題になっているケースもあるようです。「計画的に」というのがミソで、多額の受取金のある保険に入るために預金の大部分を保険契約金として一括で支払い、債権者への支払い原資を意図的に減らすような行為が問題となると思います。

 

Q14)相続財産全体がプラスだかマイナスだかわかりません。価値のわからない宝石もありますが、近くに鑑定してもらえるところがないので時間がかかりそうです。こんな状況では3か月ではとても終わりそうにありません。こうした場合はどうしたらいいのでしょうか?

A14)3か月という期間は、家庭裁判所に請求して伸ばしてもらうことも可能です。伸ばしてもらう理由にもよりますが、プラス3か月ぐらいになることが多いです。

3か月の期間を伸ばしてもらったけれども、結局よく解らない場合には、限定承認という方法もあります。これは、プラスの財産の限度で債務を弁済する方法です。


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