5-3.課税対象財産

5.相続税申告・納税

相続税の課税対象となる財産は大きく以下の3つに分類されます。

1.本来の相続財産
2.生前の贈与財産
3.みなし相続財産

 

1.本来の相続財産

この場合の財産とは、亡くなった方が死亡時に所有していた現預金、有価証券、土地・家屋、貸付金、著作権などの金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてを指します。

金銭的な価値を有していても、墓地や墓石、仏壇、仏具などは「祭祀財産」となり、相続税の課税対象ではありません(ただし美術品としての仏具は相続税の対象になり得ます)。

また、公益事業に供される財産も相続税の対象からは外れます。

 

2.生前の贈与財産

相続の開始日から死亡前3年以内に取得した、被相続人からの贈与財産や相続時精算課税の適用を受けた財産も相続税の対象になります。

相続対策として行なった贈与と関連するところなので、注意が必要です。また、贈与した財産は被相続人のものではないという思い込みから、申告を担当する税理士に伝えない方もいらっしゃるようで、後日、課税漏れでトラブルになるケースも聞きます。

贈与した財産は被相続人のものではない、確かに民法上は正しいのですが、税法上はこれも課税対象とします。民法と税法のズレには注意が必要です。

1)相続の開始日から死亡前3年以内に贈与を受けた財産

暦年贈与で対策を講じていた金銭などが主な対象となります。

なお、おしどり贈与(婚姻期間20年以上の夫婦間贈与)や住宅取得等資金の贈与の特例を使ってなされた贈与は、贈与時点ですでに贈与課税を免除されているので、持ち戻すことはありません。

2)相続時精算課税制度の適用を受けて贈与を受けた財産

相続時精算課税制度は、贈与時には課税しませんが、相続時に持ち戻して精算しましょう、という制度なので、当然、課税対象となります。

 

3.みなし相続財産

被相続人が相続開始のとき(亡くなったとき)に保有していた財産ではないのですが、被相続人が持っていたのと実質的に同じだとみなされる財産も相続税の対象です。また、被相続人が亡くなったことを原因として生じる財産も相続税の対象です。

前者の例としては、家族名義で積み立てていた、実質は被相続人の預金とされるものがあり、後者の例としては、死亡保険金、死亡退職金などがあります。

後者の死亡保険金と死亡退職金は、民法上はともに受取人固有の財産となるので、相続財産ではありません。したがって、遺産分割の対象には原則としてなりません。しかし、税法上は相続財産と「みなし」ます。また、民法と税法のズレですね。

1)名義性預金

被相続人が家族名義で積み立てをする預金があります。家族の名義は付いているものの、通帳と印鑑は被相続人が管理し、名義人当人が預金をまったく使用できない(管理できない)状況であったならば、それは相続財産とみなされます。

当人に贈与したい意思があるならば、生前より、通帳と印鑑も当人に渡し、当人管理のもと、たまには使用できる(引出しの履歴)環境がよいでしょう。

2)死亡保険金

ア)保険契約の内容により相続税が課税される

死亡保険金に相続税がかかる典型は次の契約パターンです。

・保険料負担者 夫(被相続人)
・被保険者(保険を掛けられた者) 夫
・死亡保険金受取人 妻

イ)非課税枠

死亡保険金は、法定相続人×500万円の金額までは、相続税が課税されません。

アの契約内容で、保険受取金が3,000万円だったとして、法定相続人が妻を合わせて3人とすると、1,500万円が控除されて、残りの1,500万円を課税対象財産として他の相続財産に加えます。

3)死亡退職金

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金等を相続人が受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。(金銭の代わりに支給された現物も含む)

「被相続人の死亡によって」「退職手当金等を相続人が受け取る」というところがミソで、被相続人が生前に退職しており、その支給の決定が本人死亡後3年以内の場合も含みます。要するに、本来は勤務していた本人が受け取るべき退職金を、相続人が代わって受け取るケースが対象になります。

ア)課税対象となる退職手当金

① 死亡退職で支給される手当金の金額が、被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
② 生前に退職したが、退職手当金として支給される金額が、被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

イ)非課税枠

死亡退職金は、法定相続人×500万円の金額までは、相続税が課税されません。


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