12-4.後見人の選び方
1.成年後見の担い手
1)親族後見人(配偶者・子・兄弟・甥姪)
ア)メリット
① 近しい存在で安心感がある。
② 報酬は原則として発生しない。
イ)デメリット
① 管理や報告が杜撰になる傾向。
② 使い込み事件が多発している(事件の9割以上)。
2)専門職後見人(司法書士・弁護士・社会福祉士など)
ア)メリット
① 誠実な職務姿勢
② 適切な判断・管理
イ)デメリット
① 近しい存在ではない
② 報酬が発生する
3)市民後見人(社協・NPO法人等・一般市民)
ア)期待
① 超高齢化社会へ対応するための受け皿となる。
イ)道半ば
① 社会福祉協議会が後見支援員と連携して行う形がようやく始まったばかり
② 家庭裁判所も指名には消極的
2.成年後見人としてふさわしい人は
1)あらゆる環境において共通して言えること
① お金(財産管理)に関して絶対の信頼をおける方
② 面倒見がよく、本人の生活環境に配慮があり、環境改善に尽力してくれる方
③ 本人より若い方
④ できれば近所にいる方
2)個々の事情によって、得意とする分野に注目したとき言えること
① 弁護士
家族間の争いや第三者との紛争問題が顕在化している場合
② 社会福祉士
管理する財産が多すぎず、かつシンプルで、もっぱら福祉面での手厚いフォローが必要な場合
③ 司法書士
上記の課題に偏りがなく、全体バランスを取るのがよい場合
最近は、親族後見人の使い込み事件の多発や、親族間の関係性が悪いことから、司法書士などの専門職を後見人に指名したり、身上監護は親族、財産管理は司法書士が担当するという「複数後見」としたりする事例も増えてきました。
3.法定後見制度での選任の実際
1)候補者の記載
法定後見人を選任する場合、後見開始審判の申立書には後見人の候補者を記載する欄があり、ここに候補を記載しておけば考慮してもらえます。
親族間ですでに誰が後見人になるか決まっていればその方を記載します。
申立てを支援する司法書士にそのまま候補者になってもらうケースも多いです。
ただし、家庭裁判所の家事審判官(裁判官のこと)が諸事情を考慮して、候補者では不相当であるとの判断がされると、候補が記載されていても別途選任されます。
2)候補者が不相当と判断される例
以下、不相当と判断される代表的なものです。
ア)親族後見人の場合
① 親族間の争いが潜在的にあり、親族の一人がなると、後見人と他の親族間でいさかいが頻発してしまうケース。
② 管理すべき財産が多岐に亘っており、候補者であるその親族の人生背景からみて、明らかに荷が重いとするケース。
イ)専門職後見人の場合
① 社会福祉士が候補として挙がったが、法律的な課題が多く、荷が重いとするケース。
② 親族間の争いが顕在化しており、申立てを支援した弁護士だと、申立人たる親族側への肩入れが顕著に出そうで、後見人と他の親族間でいさかいが頻発してしまうケース。
3)家庭裁判所による選任
候補者として不相当と家庭裁判所が判断した場合や、候補者が記載されていないときは、家庭裁判所が専門家の中から適任者を探して、選任します。
実際は、司法書士会や弁護士会に丸投げで、各会より推薦された者を漫然と選任します。
4)欠格事由
なお、以下の人は欠格事由に該当しますので、後見人にはなれません。
① 未成年者
② 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
③ 破産者
④ 行方の知れない者
⑤ 本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族
⑥ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
4.任意後見制度では
任意後見の場合は法定後見の場合と異なり、自分で自由に後見人の候補者(任意後見受任者)を選任することができます。