13-3.自分の死後、認知症の配偶者の財産を適切に管理してほしい
1.課題
1)前提
Aさんは先日、がんの告知を受けました。余命4か月です。
Aさんには認知症の妻Bさんがいます。子供がいないAさんは、妻を残して先立つことを大変心配しています。
2)Aさんの遺言だけでもダメ、成年後見は避けたい
とりあえず、すべての財産を妻Bさんに相続させるとする遺言は書きました。しかし、Bさんは自分で財産管理をすることができません。成年後見制度には嫌悪感があり、後見人による財産管理はできれば避けたいと思っています。
3)遺言が書けないBさん
ところで、最近、高齢になったAさん夫婦のことを何かと気にかけてくれる甥Cさん(Aさんの兄弟の子)がいます。Aさんとしては、できればCさんに財産を管理してもらい、AさんもBさんも亡くなった後に残る財産は、Cさんが相続してくれたらいいなと思っています。
しかし、CさんはBさんの相続人ではありません。Bさんは認知症で遺言が書けないため、Cさんに確実に財産を承継させることはできないのかなと思います。
4)Aさんの希望は叶えられるのか
① 自分亡き後、正当な権限でCさんがBさんの財産管理ができるようにしたい。
② Bさんの相続人ではないCさんに、残った財産を引き継ぎたい。
何かよい方法はないでしょうか。
2.民事信託を活用した解決例
1)信託の設計
Aさんとしては、自分が生きている間は自分で管理したいと思っています。甥Cさんに、あまり多くの期間の負担をかけるのもよくないと考えて、自分亡き後、妻Bさんが生きている間だけの管理を託したいと思っています。
そこで、Aさんには、遺言による信託の設定を提案しました。遺言による信託とは、遺言の要式に則り、遺言の中で信託設定を行うことです。
2)Aさんの死後から始まる、Cさんの管理処分権限
契約書による信託設定が一般的ですが、それだと、Aさんが生きている今から信託の効力が出るため、甥Cさんに長期間に亘る管理をお願いすることになります。信託の効力が、Aさんが亡くなった後から生じる「遺言による信託」がAさんの希望には合います。
信託の内容としては、甥Cさんに受託者になってもらい、信託財産を妻Bさんの生活のために必要に応じて交付してもらったり、場合によっては、Cさんにおいて必要な支払いを行なってもらったりします。
3)Cさんが残余の信託財産を引き継ぐことができる
Bさんが亡くなった後に、信託が終了するものとし、残余の信託財産は、甥Cさんに取得してもらうことにしました。
こうして、Aさんの抱くあらゆる課題を、民事信託を処方することで、解決できました。
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