5-4.相続税法上の評価額の算出

5.相続税申告・納税

相続税の申告で必要な評価額の基準は、国税庁の「財産評価基本通達」に拠ります。共通する原則や評価方法を具体的に規定し、取扱いを統一することを目的としています。

 

1.土地の評価方法

1) 路線価方式

算出方法:路線価 × 補正率(※) × 土地面積

路線価方式は、主に市街地的形態を形成する地域で採用される方式で、毎年7月に各国税局が作成する路線価図に基づいて土地を評価します。

路線価とは、市街地の道路ごとに付いている「路線に面する敷地の標準的な評価額(1㎡)」のことです。路線価を調べて土地の面積をかけ合わせれば、土地の大まかな評価額を算出できます。

路線価そのものは、国税庁のホームページや税務署でも調べることができます。

しかし、実際の土地の評価は、土地の形・大きさ、接する道路の数など、様々な要素により異なるのが実情です。土地の間口、奥行き、地形等で利用しにくい土地は一定の方法により評価額が低くなります。逆に二つの路線に面している角地などは、土地の利用価値が高くなるため評価額も高くなります。

優秀な税理士は、机上の計算のみならず、現地に行って、高低差や、土地の形、交通手段や周辺の施設をチェックし、それらの要素を加味して、評価額の調整(補正)をしています。

冒頭の計算式の、補正率(※)がとても重要です。

2) 倍率方式

算出方法:土地の固定資産評価額 × 倍率(※)

路線価が定められていない都市郊外の地域で採用される方式です。地域ごとに定められている倍率表に基づいて土地を評価します。

固定資産評価額が、登記上の地目にかかわらず、どのような土地として算定されているかの判断も重要です。登記上の地目・課税地目の双方が「畑」とされていても、宅地に寄せて評価されているのか(宅地批准)、純粋に農地として評価されているのか(農地批准)により異なります。

倍率は、純粋に農地として評価されている場合には、40倍など、大きい値の倍率を適用しますが、すでに宅地批准で評価されていれば、そのような大きな値を掛けてしまうと、途方もない金額になります。正しい倍率評価をして、実際の土地の評価額を出します。

3)借地の評価

算出方法:路線価方式、または倍率方式の評価額×借地権割合

※借地権割合は路線価図や評価倍率表に表示されています。

 

2.建物の評価方法

1)自用家屋

算出方法:固定資産評価額×1.0

2)貸家

算出方法:自用家屋の価額×(1-30%)

貸家がマンション1棟などで、たとえば10戸部屋があり、空き室率が高い場合、その分の補正をする必要がある場合があります。この場合、自用家屋に近づくので評価は上がってしまいます。

 

3.上場株式の評価

以下の4つのうち、最も低い金額で評価します。これらの金額は、インターネットでも調べられます。

① 相続開始の日の終値
② 相続開始の月の終値の月平均額
③ 相続開始前月の終値の月平均額
④ 相続開始前々月の終値の月平均額

 

4.生命保険金の評価

算出方法:受取金額 - 非課税枠(500万円×法定相続人の数)

 

5.死亡退職金の評価

算出方法:受給金額 - 非課税枠(500万円×法定相続人の数)

 

6.生命保険契約に関する権利(保険事故が発生していないもの)

算定方法:解約返戻金相当額

生命保険契約に関する権利として評価する契約パターンの典型は、次のとおりです。

・保険料負担者 夫(被相続人)
・被保険者(保険を掛けられた者) 妻
・死亡保険金受取人 夫

 

7.自社株式の評価

非上場会社の株式は、相続税・贈与税の計算上「取引相場のない株式」に分類されます。
大きく分けると、その評価方法は、

① 純資産価額方式
② 類似業種比準価額方式
③ 配当還元方式

があります。

これらの評価方法は、会社の規模(資産総額・従業員数・売上高等)によって、以下のように変わります。

① 大会社;類似業種比準価額方式か純資産価額方式を適用します。
② 中会社;類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式
  (併用割合:類似0.6~0.9、純資産0.4~0.1)
③ 小会社;純資産価額方式または類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式
  (併用割合:0.5)

自社株式の評価は、難度の高い業務です。ここだけは、法人業務を日常的に行なっている税理士の方が得意だったりします。

 

8.税理士選びが重要

相続税申告に慣れていない税理士の場合、土地の評価を適正に行うことができないことがあります。その結果、相続税額にも影響が及び、過剰な納税を余儀なくされた結果、後に税理士を相手とする訴訟になるケースもあります。

当事務所では、相続税に詳しい税理士や、相続不動産の評価に長けた不動産鑑定士と連携して業務に取り組んでおります。不動産の評価を見直し、相続税額の修正ができる可能性もありますので、お気軽にご相談ください。


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