8-2.相続した不動産の上手な売却

8.不動産の測量と売却

相続を機会に、不動産の売却を検討することがあります。

売却する背景と、売却により何が実現したいかにより、相続時の名義の入れ方や、利用する税の軽減措置が異なります。

 

1.不動産を売却する背景

A 売却代金の使い道が決まっている資金需要から

相続税の納税原資にするなど、不動産を売却しないと資金繰りが立ち行かない場合です。

B 不動産ではなく、相続人間で現金で分割したいという気持ちから

換価分割、という方法です。遺産分割の方法について、相続人間で、現金で分けようという合意ができた場合です。安易に共有名義の不動産を生むより良い方法と言えます。

 

2.相続登記の名義

A 売却代金の使い道が決まっている資金需要から

一家全体の相続税の納税原資とする場合には、納税の必要な相続人全員の名義を入れます。法定相続分どおりで登記をすることも多いと思います。

一方、特定の相続人の納税原資とする場合には、当該相続人の単独名義とすることもあります。

B 不動産ではなく、相続人間で現金で分割したいという気持ちから

換価分割ですが、換価後の現金の分割割合を、法定相続分ではない任意の割合とするときは、その割合に対応する共有持分での相続登記をする必要があるでしょう。安易に法定相続分で登記をすると、現金での分配割合と一致しない部分は、取得分が少なかった相続人から、取得分が多かった相続人に贈与した扱いとなります。

少し専門的になりますが、法定相続分による登記は、遺産分割協議を経ないでした登記で、未分割共有の状態であると考える向きもあります。しかし、法定相続分による登記を入れたうえで、当事者全員が売買契約をした以上、法定相続分でそれぞれが相続することを同意したと判断されます(遺産分割協議の成立が擬制されると考えます)。後から法定相続分と異なる割合で代金を分割することは原則的には認められませんのでご注意ください。

 

3.譲渡所得税

不動産を売却すれば、その利益に対して譲渡所得税がかかります。相続で取得した不動産の場合、数十年前に購入した際の価格の低さから取得費の計上が低く抑えられてしまう傾向があり、譲渡所得税を検証する場面は多いと思います。

譲渡所得税は、不動産に名義を持っていた相続人ごとに申告納税するので、その観点も入れて、名義を持つ人、その共有持分を考える必要があります。

漫然と相続人全員による法定相続の登記を入れて、全員が売主当事者となると、その年の所得の増加により、翌年の住民税に大きな影響がある人もいます。ある相続人に譲渡所得税はまとめて負担してもらい、その他の相続人は代償金でもらうという方法との比較もするべきでしょう。

なお、その場合には、代償金の計算において、代表して売主当事者となった相続人が損をしないように、譲渡所得税、翌年の増額する住民税、不動産仲介手数料などの経費など、様々な要素を計算に入れる必要があります。

 

4.小規模宅地特例との兼ね合い

相続してすぐ売却するときには注意が必要です。亡くなった人の自宅の土地について小規模宅地の特例を使う場合には、相続税の申告期限(亡くなった日の10か月後)まではその土地を保有し続ける必要があります。それ以前に売却すると、小規模宅地特例による80%の減額が使えません。

 

5.相続税が取得費に加算される特例

この特例は、相続した土地建物を一定期間に譲渡した場合には、納税した相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。一定期間とは、相続税申告期限から3年以内に譲渡した場合この特例が適用できます。

相続した後、売却までに時間がかかると、税務上の優遇を逃してしまう結果となります。

このように、相続後の不動産の売却は、実に多くの検討すべき課題があります。専門家のサポートは必須と言えます。不動産会社ではなく、相続の実務家である当事務所まで、売却のご相談はまずお寄せください。


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