10-9.非対面で行う司法書士相談

10.遺言

1.新型コロナウイルスの意味

新型コロナウイルスの蔓延は、社会構造を大きく変化させています。コロナ前・コロナ後、という言葉も、しばらくすると出てくるでしょう。
専門家相談の形も、コロナ前後で大いに変わります。新型コロナウイルスを例に、感染症アウトブレイク下における専門家相談について考えてみます。

新型コロナウイルスは、高齢者や持病がある方が罹患すると、死亡率もそれなりに高いようです。ふだんあまり死を意識することもなく生活してきた私たちも、身近な芸能人が亡くなるニュースに触れ、そのリスクを自分事として捉えるようになりました。
また、罹患後は家族でさえも隔離されて死に目に会えていない状況。そして、罹患した人が亡くなると、遺体にも会うことができない例もあります。

死を自分事として捉えるとき、自分が亡くなった後もつづく、家族が生きる世界のことへの関心が生まれます。大切な人を守るために、これまで本気で考えることはなかった、遺言の作成を検討する方もいるでしょう。しかし、遺言の相談をしようにも、人との接触を極端に制限されている現在、司法書士・行政書士などの専門職に相談するために外出することを躊躇する方もいるでしょう。まして、コロナウイルス罹患後は、専門職に直接会って相談することは不可能です。

 

2.新型コロナ下において専門家相談を受けるには

1)新型コロナウイルスの外出自粛要請下における遺言相談の可否

しかし、新型コロナウイルスの外出自粛要請下において、高齢である本人を外出させることには不安があります。本人に持病がある場合、コロナ罹患後の重篤化のリスクが高いです。

専門家は、電話でもおよその相談には乗ってくれますが、基本的には専門家の事務所まで来てほしいと促され、遺言者本人の様子を直接会って確認したいと言ってくるしょう。高齢の本人の判断能力や、遺言内容に関しての本人の真意を、専門家が確認するために必要なようです。(原則論です。本コラムを最後までお読みいただき、新しい展開をご確認ください。)

2)公証役場での新規受付停止?

遺言は「公正証書で作成する遺言(公正証書遺言)」と「自筆で作成する遺言(自筆証書遺言)」が代表的なものです。

公正証書遺言は、公証役場で作成するものですが、このコロナ禍において、公証役場もスタッフの交代勤務を取り入れていて、世の中の人の移動が制限されている間、新規の相談は受けないというところもあります。

そこで、公証役場に行かずとも作成できる自筆証書遺言が検討されますが、自筆の遺言は、遺言として成立するための要件が法律(民法)で定まっています。そのため、ご相談者の皆様には、専門家の立ち合いのもと、その場で適切なアドバイスを受けながら、遺言を作成することを推奨しています。

 

3.非直接対面型のリモート専門家相談

1)リモート専門家相談の可能性

遺言相談機会を得られないまま、遺言者が新型コロナウイルスに罹患してしまったらどうなるでしょうか。家族ですら面会謝絶、専門家と遺言者が直接会うこともできません。入院後2週間ほどで亡くなるケースもあります。このような状況で遺言を作成することは難しいでしょう。

今のうちに遺言を作成するためには、専門家が遺言者と直接会わなくても「高齢の遺言者の判断能力や、遺言内容に関しての遺言者の真意を確認できる」というポイントをクリアできる環境づくりが必要です。

ところで、緊急事態宣言が出てから、在宅テレワークや、オンラインでのリモート会議・面談が社会に浸透し始めています。

「非直接対面型のリモート専門家相談」を実施している専門家事務所が少しずつ増えてきており、当事務所はそのひとつです。

2)自筆証書遺言のポイント

公証役場で新規の依頼申し込みが難しい現状では、自筆証書遺言の作成をお勧めしております。
自筆証書遺言のポイントは次のとおりです。

① 形式上のポイント

・全文(財産目録を除く)、自書すること
・日付を書くこと
・氏名を書くこと
・押印すること

② 内容のポイント

・遺産を特定できていること
・実現したいことは法定遺言事項であること

③ 訂正のポイント

・民法に定められた加除訂正方法に沿っていること

3)自筆証書遺言のリモート相談のポイント

自筆証書遺言のポイントを満たすように、リモート面談では、「画像の共有」も活用し、遺言者が書いた遺言を司法書士が拝見し、その場で直接の修正ポイントのご案内をいたします。加除訂正についても、民法の定めに沿った訂正方法のご案内をいたします。

また、リモート面談において、当事務所の司法書士は、遺言者の表情や意向を十分に汲むことができるので、安心して遺言を作成していただけます。

□ 「画像の共有」を活用した、直接の修正のご案内
□ 遺言者の表情を拝見し、ご意向を十分に汲むことができるような臨場感を大切にするリモート環境

4)むすび

今後、専門家相談も、リモートでの面談はスタンダードになっていくものと思われます。リモート面談ツールの使い勝手の良さ次第では、新型コロナウイルスなどの感染症に罹患している本人が、家族の支援なくても、自筆証書遺言の作成指導を受けることは可能かもしれません。

緊急時こそ、次の時代のスタンダードの先駆けに触れて、少しでも現実の課題に寄り添ったリーガル(法的相談)サービスをご提供したいものです。


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