12-3.法定後見制度
認知症が進行し判断能力が不十分になると、たとえば高齢者が利用できる各種制度やサービスの選択を、ご自身で行うことが難しくなります。また、詐欺や悪質な訪問販売等の消費者被害に遭う可能性も増えます。離れて暮らすご親族としては不安が募ります。法定後見制度は、こうしたご親族の不安の解消に応えてくれる制度です。
1.法定後見人が支援できること
1)財産管理に関する法律行為
後見人が、本人の預貯金の管理、不動産などの処分、遺産分割など、財産に関することについて支援します。本人のために必要な支出を計画的に行います。
2)身上監護に関する法律行為
介護・福祉サービスの利用や医療・福祉施設への入退院手続き、それに伴う費用の支払いなどをはじめ、日常生活にかかわる法律行為の支援をします。
3)代理のために必要な事実行為
後見で「事実行為」というときは、法律行為以外の行為で(保佐や補助であれば代理権目録に記載された法律行為以外の行為で)、主に法律効果の発生しない、本人の日常生活に寄り添うにあたり必要性のあるものをいいます。そうした事実行為であっても、「代理のために必要な範囲」において、後見人が行うことができます。
一方、日用品の購入のほか、入浴介助・食事の世話・清掃・実際の介護等の事実行為は、代理のために必要な範囲ではないので、後見人としてサポートができません。
2.法定後見制度の主な特徴
1)後見人の選任には、家庭裁判所が関与します
最終的には、家庭裁判所の専権事項ですので、候補者として挙げた親族が就任できず、費用のかかる専門職が就任したとしても、文句は言えません。
2)利用すると、通常は本人が亡くなるまで続きます
本人の判断能力が回復すれば別ですが、基本的には能力は漸減していくものと思いますので、亡くなるまで後見人はその任に就くことになります。
3)後見人就任中、そして退任するまで、家庭裁判所が監督します
後見人は家裁の監督の元、財産管理や身上監護に務めます。定期的な報告もあります。
4)後見監督人の就任、後見制度支援信託の利用など、財産管理の安全を強化することもできます
財産管理の安全を強化できる、する視点は、主に家裁側のものです。管理財産が一定額を超えた場合、などの形式的な基準でも監督強化がなされることがあり、健全に任務遂行している後見人も抗えず、余計な費用がかかる原因となっています。
3.法定後見の類型
1)後見
判断能力が著しく低下し、簡単な法律行為、日常の財産管理など、すべてにおいてご自身で行うことができない場合、後見申立時に依頼した医師の診断又は鑑定により「後見相当」とされ、家裁により後見の審判がされると、成年後見人が就任します。
後見人は包括的な代理権を持ち、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて、本人の代わりに活動し、本人を保護します。後見人が知らずになされた本人の法律行為は、無条件に取り消すことができます。
2)保佐
判断能力に中程度の低下が見られ、重要な法律行為、日常の財産管理などご自身で行うよりも第三者の支援を受けるべき状況の場合、後見申立時に依頼した医師の診断又は鑑定により「保佐相当」とされ、家裁により保佐の審判がされると、保佐人が就任します。
民法第13条に定める次の事項については、必ず保佐人に同意がいりますが、同意が必要な行為を増やすこともできます。また、本人の希望により、保佐人に一定の代理権を与え(代理権目録に記載)、本人に代わって行なってもらうこともできます。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 民法第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
同意が必要な行為を、保佐人の知らないところで本人が行なった場合、原則として無条件に取り消すことができます。
3)補助
判断能力にある程度の低下が見られ、日常生活は十分に送れるものの、重要な法律行為等については第三者の支援を受けたほうがいい状況の場合、後見申立時に依頼した医師の診断又は鑑定により「補助相当」とされ、家裁により補助の審判がされると、補助人が就任します。
補助人の同意を要する行為、補助人に代理権を与える行為、ともに本人と相談のうえ決めます。
4.成年後見の申立と付随する手続き
1)成年後見の申立て
後見人を選任しなくてはならない場面において、資料の収集、かかりつけ医への診断書の手配、財産目録の作成、年間収支の把握、本人の環境についての報告文書の作成など、申立手続きはかなり煩雑です。
本人を取り巻くケアマネなどの関係者と連絡を取り合い、後見人就任後の家庭裁判所への初回報告までスムーズに行くように配慮した申立てを、日本で最も後見手続きに精通した専門職である司法書士がご支援します。
ア)サポート料金
成年後見申立て |
15万円 +消費税 |
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イ)実費及び医師への支払い
① 資料収集 約1万円
② 診断書 約1万円
③ 鑑定書 約5~10万円
2)成年後見人就任直後の集中サポート
後見人就任から一か月間の手続きをサポートします。
就任直後は、金融機関や役所への各種届出に始まり、家庭裁判所に初回報告を行う必要があります。
成年後見業務の実績豊富な当事務所がご支援します。
ア)サポート内容
① 専門家による1か月の集中相談(困ったときはいつでも専門家がアドバイスします)
② 財産目録作成(プラスの財産とマイナスの財産の全てを書き出した一覧表)
③ 裁判所への報告書作成(後見登記事項証明書の取得を含む)
イ)サポート料金
成年後見人就任直後の集中サポート |
4万円 +消費税 |
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3)成年後見業務の定期報告サポート
後見人として1年に1回行う、家庭裁判所への報告をサポートします。
認知症の母の財産管理を他人にまかせるのは嫌で、専門職ではなく自分が後見人になったが、いざやってみると、家庭裁判所へ報告が煩雑で、自分にはとてもそこまで手が回らない、そんな方には、成年後見業務の定期報告サポートがお勧めです。
全部専門職に依頼した場合の約6分の1の費用で、最も煩雑な家庭裁判所への報告文書の作成を依頼できます。
ア)サポート内容
① 一年間の預金通帳収支報告書作成(2ヶ月に一度、収支表を提出いただきます)
② 現状財産目録作成(プラスの財産とマイナスの財産の全てを書き出した一覧表)
③ 後見事務報告書作成(専門家がヒアリングを行い、裁判所に提出する報告書をまとめます)
④ 報酬付与の申立て(後見業務の報酬請求をする場合)
イ)サポート料金
成年後見業務の定期報告サポート |
6万円 +消費税 |
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