12-5.任意後見制度

12.成年後見制度とその周辺契約

判断能力が不十分になってから裁判所が選任するのが法定後見制度で、判断能力の衰えに備えて、判断能力の十分なうちに自分の将来を託す人物と契約を交わしておくのが任意後見契約です。頼れる身内がいない方のご利用のほか、知的障害を持つお子様を持つ親御様が、自身に万が一のことがあった場合に備えて、お子様のために法定代理人として任意後見契約を交わしておくなどの利用も考えられます。

 

1.任意後見人が支援できること

任意後見契約の代理権目録に定める範囲において、下記の行為ができます。

1)財産管理に関する法律行為

後見人が、本人の預貯金の管理、不動産などの処分、遺産分割など、財産に関することについて支援します。本人のために必要な支出を計画的に行います。

2)身上監護に関する法律行為

介護・福祉サービスの利用や医療・福祉施設への入退院手続き、それに伴う費用の支払いなどをはじめ、日常生活にかかわる法律行為の支援をします。

3)代理のために必要な事実行為

後見で「事実行為」というときは、代理権目録に記載された法律行為以外の行為で、主に法律効果の発生しない、本人の日常生活に寄り添うにあたり必要性のあるものをいいます。そうした事実行為であっても、「代理のために必要な範囲」において、後見人が行うことができます。

一方、日用品の購入のほか、入浴介助・食事の世話・清掃・実際の介護等の事実行為は、代理のために必要な範囲ではないので、後見人としてサポートができません。

 

2.任意後見制度の主な特徴

1)必ず公正証書で作成する

任意後見契約は、必ず「公正証書作成」で作成します(自作の契約書などでは無効です)。

また任意後見契約は、一度取り決めたら変更や解除(取り止め)ができないものではありませんが、契約の内容を変更したい、契約そのものを取り止めたいというときは、同じく公正証書で行わなければなりません。

2)判断能力低下後には利用できない

任意後見契約は、自らの意思で、自分一人ではできないことを包括的に第三者に任せる契約です。この契約自体が、非常に重要な行為ですので、判断能力が低下してしまっては、できません。

3)判断能力が低下するまでは開始しない

任意後見人の任務開始時期は、本人の判断能力が衰えたときで、任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申立て、監督人が就任することで、効力が生じます。

4)取消権の範囲は少し狭い

任意後見契約の発効後であっても行為能力の制限はないので、制限行為能力者としての取消しは不可です。

代理権に基づいた取消権の行使はできます(詐欺、悪徳商法など)。

5)代理権限の証明が容易かつ明確である

金融機関、介護施設、医療施設、親族などに対して。

6)監督機能がある

任意後見監督人(間接的に家庭裁判所)による監督を必ず受けます。

なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見受任者を正式な任意後見人と認め、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。

 

3.任意後見契約の類型

併用すべき他の契約と結合し、下記のような類型があります。

1)移行型

体力が落ちて、日々の支払いなどの財産管理において既に困っており、判断能力が低下する前からの支援がほしい場合、次のように設計します。判断能力の低下時において任意後見に移行することに注目し、「移行型」と呼んでいます。

① 任意代理契約

 ↓

② 任意後見契約

 ↓

相続開始後 A 死後事務委任契約

      B 遺言

任意後見契約の類型-1.移行型プラン

任意後見契約の類型-1.移行型プラン

2)将来型

まだ判断能力は落ちていないが、判断能力が低下した場合に備えておきたい、そして自身の環境変化を見守っていてもらいたい場合、次のように設計します。見守り契約をしたうえで将来に備えるため、「将来型」と呼んでいます。

① 見守り契約

 ↓

② 任意後見契約

 ↓

相続開始後 A 死後事務委任契約

      B 遺言

任意後見契約の類型-2.将来型プラン

任意後見契約の類型-2.将来型プラン

3)段階型

まだ体力も落ちていないが、体力が落ちた場合、又は判断能力が低下した場合のそれぞれに備えておきたい、そして自身の環境変化を見守っていてもらいたい場合、次のように設計します。見守り契約からすべてのフォロー体制を段階的に設計しているため、「段階型」と呼んでいます。

① 見守り契約

 ↓

② 任意代理契約

 ↓

③ 任意後見契約

 ↓

相続開始後 A 死後事務委任契約

      B 遺言

任意後見契約の類型-3.段階型プラン

任意後見契約の類型-3.段階型プラン

4)即効型

任意後見制度は、本人が補助相当からでも発効できるため、すでに補助相当の方であれば、任意後見契約後、すぐに後見監督人の選任申立てをする設計もあります。すぐに効力が生じるので、「即効型」と呼んでいます。

なお、補助相当であれば、法定後見の補助申立てをしなさいと促す公証人もいるので、注意が必要です。

 

4.任意後見契約の設計、作成

1)任意後見契約の設計

ご本人の家族関係、生活環境、今後のライフプランをお聞きしたうえで、任意後見契約の内容を設計します。必要に応じて、併用するとよい周辺契約等(任意代理契約、死後事務委任契約、遺言など)をご提案します。

2)任意後見契約書の作成

任意後見契約書は、必ず公正証書で作成します。周辺契約も併せて公正証書にすることがほとんどです。公証役場との打ち合わせを当事務所にて行ない、作成日にはご同行します。

ア)サポート料金

任意後見契約書の作成支援 A

8万円 +消費税

イ)公証人手数料及び実費

① 基本手数料 11,000円
② ページ加算 250円/枚
③ その他実費 約4,000円

 

5.任意後見契約の受任者

1)司法書士が任意後見人(受任者)になります

親族に後見人候補者がいない場合、当事務所の司法書士が任意後見人として契約をすることもできます。昭島市役所前の立地で、地域の皆様の信頼を長らく醸成してきた当事務所が、ご本人の財産管理と身上監護を誠実に執り行います。

ア)受任報酬

① 任意後見人報酬  月額基本 5~6万円(税抜き)
② 任意後見業務の臨時報酬あり

例 入退院手続き 10万円(税抜き)


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