13-5.自社株を後継者へ贈与したいが、議決権は引き続き保有したい
1.課題
1)前提
Aさんは事業を営んでおり、幸いにも近年は業績が好調で、債務超過も解消し、この先数年は好調が予想され、数年前から会社を手伝っている長男Bさんも、会社を継いでいくことに魅力を感じ始めているようでした。
2)自社株の価値の上昇
そんな折、顧問税理士より、今のうちに長男のBさんに株式を贈与しておいてはどうかと言われました。会社の業績がよくなると、会社の資産価値も上がり、Aさんが保有する自社株の評価額が毎年上がると言います。
自分では実感がわかないのですが、会社の株は、いずれ1億円程度の価値になることが予想され、Aさんが亡くなった時の相続税にも影響すると言います。
3)未熟なBさん
しかし、息子Bさんは経営者としてはもう少し修行が必要なので、当面は会社の重要事項はAさん自身で決めたいと考えています。会社の決定権は株式にあると言いますので、その議決権はAさん自身で保有している必要があるのかなと思います。
4)Aさんの希望は叶えられるのか
① 議決権はAさんが持ち続けていたい。
② 自社株の価値は、できれば早々に長男Bさんに渡したい。
このような場合に、相続税対策のために株式は後継者に贈与して、議決権は引き続き保有するということは可能なのでしょうか。
2.民事信託を活用した解決例
Aさんには、自社株を信託財産とし、受益権(財産的価値)を長男Bさんに与えることを提案しました。
1)議決権はAさんが握れる
まずAさんの財産である自社株をAさん自身に信託します。Aさんが、委託者でありながら、受託者となります。(自己信託という特殊な信託の設定方法です。)
株式を信託すると、議決権は受託者が握ります。
2)自社株の財産的価値は長男Bさんに与える
受益者を息子のBさんに設定し、自社株の財産的価値はBさんへと移します。このとき、受益者であるBさんに自社株が贈与されたとみなされ、贈与税がかかることになりますが、今後さらに評価が上昇していく自社株を今贈与することは、方法として採用できます。
これにより、財産的価値が低いうちに、自社株の財産的価値をBさんに移すことができました。
こうして、Aさんの抱くあらゆる課題を、民事信託を処方することで、解決できました。
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